2025年度予算案の審議において、「高額療養費制度の見直し」が議論された。高齢化や高額薬剤の普及などにより高額療養費が年々増加しており、現役世代を中心とした保険料が増加していることを踏まえ、セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、健康な方を含めた全ての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、各所得区分ごとの自己負担限度額の引き上げを含む見直しが提案されている。こうしたなか、患者団体をはじめ、医療関係者や支援者から、生命に直結するがん治療への影響、日常生活や将来への不安など、切実で重要な声が多数寄せられている。2025年2月26日には、日本がんサポーティブケア学会から「高額療養費制度の見直しにおける議論について」の声明を、全理事の総意のもと発出した。
本シンポジウムでは、がんによる痛みなどの症状、治療に伴う副作用や後遺症に加え、医療費や療養にかかる費用負担が経済毒性（financial toxicity）として、若年層や就労世代を含むあらゆる年代のがん患者や家族にとって大きな負担になっている現状を踏まえ、がん対策推進基本計画（第4期、令和5年3月）が掲げる 「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す」社会を実現するために何をすべきか、持続可能なセーフティネットとしての社会保障の実現に向けて、患者・当事者と医療現場の声を反映するかたちでの政策決定プロセスはどうあるべきか議論したい。

主な論点

• 高額療養費制度の見直しの議論の経緯
• 患者・当事者、医療現場の声を政策決定プロセスに届けるには何をすべきか
• JASCCを含め、学術団体が取り組むべき方向性

JASCC & KASCC 合同シンポジウム　「免疫関連有害事象（irAE）の管理」

〇免疫関連有害事象（irAE）は、がん免疫療法において今や欠かせない知識です。 韓国と日本のがん支持療法のエキスパートが集結し、最新エビデンスと実践的な対応策を共有します。
〇参加無料・同時通訳の字幕表示があります。会場からも是非日本語で質問してください。座長が通訳します。

【こんな方におすすめ】

• ICI治療後のirAE対応に迷った経験がある医師
• 現場で即使えるアルゴリズム・症例を学びたい方
• チーム医療としてirAE対応の在り方を見直したい方

【主な内容（一部抜粋）】

• irAEのタイミング／頻度／重症度の見極め
• ステロイド・免疫抑制剤の使い方
• irAE発生後のICI再開判断（中止／再導入）
• 症例ベースで学ぶ実践対応
• 医療体制・教育ツール・患者支援システムの構築
• irAE予測に向けたバイオマーカー研究の展望

Background: The indications of immune checkpoint inhibitors (ICIs) have expanded to both the palliative and curative cancer therapy settings. The goal of management for immune-related adverse events (irAEs) is to reduce the morbidity and mortality caused by irAE as well as to ensure efficacy of ICIs. The aim of KASCC/JASCC Joint Symposium is to discuss on the roles of supportive care in the management of irAEs.
Strategies and infrastructure for irAEs management:Firstly, we will summarize basic knowledge on irAEs from organ agnostic aspects, in terms of clinicopathological feature, baseline screening and routine monitoring of laboratory data, how to use steroid and immunosuppressive agents, and subsequent cancer treatment upon resolution of irAEs. We will learn organ-specific management for each irAE through case presentations, which is helpful to imagine practical management for irAE. After comprehensive overview of irAEs, we will discuss the essential components of irAE management infrastructure, including educational materials for patients and medical staffs, communication devices between medical staff and patients, or some hotline system. This infrastructure should aim to facilitate prompt recognition and reporting of irAEs, ensuring swift management actions. The approach to managing irAEs may vary internationally, influenced by differences in medical insurance coverage and other socioeconomic factors.
Roles of multidisciplinary collaboration: Because irAE can cause multi-organ events, supportive care against irAE should be performed in the multidisciplinary collaboration. We will be discussing on how and when to refer to organ-specific specialists if some irAEs occurred. It is also important for primary clinicians to increase their awareness of irAEs and collaborate with organ specific specialists from an early stage. Thus, the network between oncology care team and organ specific specialists should be build.
Future directions: Through this symposium, we will be able to recognize what scientific evidence is currently available and what is missing in the irAEs management. We may propose several suggestions in supportive care in the irAEs management. The first is a possibility of clinical trial to establish evidence-based algorisms for irAE management. Second is a possibility of international collaboration between Korea and Japan in this research field.

JASCC & MASCC 合同シンポジウムのご案内（※同時通訳字幕表示あり）
テーマ：「がん悪液質ケア：腫瘍学におけるベストプラクティスの統合」

がん悪液質のケアは、がん支持医療に携わるすべての医療者にとって、ますます重要性が増している分野です。本合同シンポジウムでは、国内外のエキスパートをお招きし、以下の4点について、最新の知見と実践的なケアについて議論を深めます。

１）肺がん患者さんにおける悪液質リスクの早期発見と介入戦略
２）がん悪液質ケアにおける集学的治療アプローチの重要性
３）栄養療法・運動療法の効果のがん種による違い
４）がん悪液質診療における栄養摂取を障害する症状（Nutrition Impact Symptoms）への対応の重要性

本シンポジウムは英語での発表が中心となりますが、座長・演者の先生方には、日本の聴衆にも分かりやすい、平易な英語でのご発表・進行をお願いしており、またリアルタイムで日本語字幕による同時通訳をご覧いただけます。日常診療に役立つ知識やヒントを得る絶好の機会と存じます。多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。

Aims: This symposium aims to integrate and share best practices in oncology care for patients with advanced cancer experiencing cancer cachexia and undergoing chemotherapy or palliative/supportive care.
Chairs: Egidio Del Fabbro (Palliative Medicine, Medical College of Georgia, Augusta University) and Koji Amano (Department of Supportive and Palliative Care, Osaka International Cancer Institute).
Session Summary: This session addresses the multifaceted challenges of cancer cachexia. It will explore the risk of cachexia development in lung cancer patients from the initial visit to treatment start, emphasizing early intervention strategies. Furthermore, the importance of multimodal treatment approaches in cancer cachexia care will be discussed. An analysis of how cancer types impact the results of nutrition and exercise treatment will be presented. High symptom burden, which impacts nutrition intake and exacerbates weight loss, muscle wasting and poor physical performance, will also be addressed. The session will highlight that oncology patients with weight loss often consume insufficient calories and protein for weight maintenance and that non-pharmacologic interventions such as nutritional counseling combined with medications for nutrition impact symptoms, may improve oral intake, quality of life and stabilize weight loss.

Speakers & Presentations:

• Utae Katsushima, MD (Department of Thoracic Oncology, Kansai Medical University): "Cachexia at risk in lung cancer from the first visit to the start of treatment"
• Yusuke Tachibana, MD (Department of Pulmonary Medicine, Kyoto Prefectural University of Medicine): "What is required in cancer cachexia care? - Multimodal treatment could be a solution"
• Shuichi Mitsunaga, MD (Division of Biomarker Discovery, Exploratory Oncology Research & Clinical Trial Center, National Cancer Center ): "The spectrum according to cancer types affects the results of nutrition and exercise treatment in an ancillary analysis from the NEXTAC-TWO trial"
• Egidio Del Fabbro, MD (Palliative Medicine, Medical College of Georgia, Augusta University): "Cachexia and Nutrition Impact Symptoms". Session Organizers: JASCC Cachexia Study group, Chair: Tateaki Naito (Shizuoka Cancer Center) and MASCC Nutrition & Cachexia Study group, Chair: Egidio Del Fabbro (Medical College of Georgia, Augusta University).

Session Organizers: JASCC Cachexia Study group, Chair: Tateaki Naito (Shizuoka Cancer Center) and MASCC Nutrition & Cachexia Study group, Chair: Egidio Del Fabbro (Medical College of Georgia, Augusta University).

　腫瘍循環器診療において心電図検査などの生理検査，そして心エコーや下肢エコーなどの超音波検査の臨床的意義は極めて高いものである．腫瘍循環器に関わる患者の増加にともなう検査件数の増加から，特にエコー検査室の件数の超過，検査技師に掛かる負担の課題は多くの医療機関からその話題が聞こえてくる．本企画では，実際に腫瘍循環器診療に携わる検査技師の業務の実情や現場の声，そして診療に携わる医師，それぞれの立場の声を聴き，検査技師と医師との連携における現状，課題をつまびらかにすることを目的としている．
　本セッションでは，まず，医師の立場からみた腫瘍循環器診療のける生理検査，エコー検査の実情と課題についてのお話を受け，その後，主要な医療機関で検査業務に従事するテクニシャンの皆さんから，心電図検査，心エコー検査，下肢エコー検査について，それぞれの医療機関の実情と課題についてお話を頂く．その後，特にテクニシャンの立場からの声を参考に，その課題への対策を検討し，今後のよりよい腫瘍循環器診療構築につながる総合ディスカッションを展開したい．

がん教育は、小中高等学校で実施することが学習指導要領で規定されているが、がん専門医やがん経験者などの「外部講師」を活用できているのは、全国の学校のうち12.4%にとどまっている。外部講師を呼びたい学校と、がん教育に興味を持っている外部講師候補者をマッチングする仕組みが必要であろう。現状は、地域ごとに工夫がなされ、独自のシステムを構築している地域もあるが、地域によって温度差がある。
がん教育を広めていくにあたって、がん教育は何を目指すのか、子どもたちに伝えるべきメッセージは何か、どのように伝えるのか、外部講師の質の担保をどうするか、といった議論も必要である。
がん教育は子どもたちだけでなく大人にも必要ではないのか、社会全体へのがん教育を行うべきではないのか、という声もある。「学校だけじゃないがん教育」については、AYA week 実行委員会がん教育チームも積極的に取り組んでいる。
本企画は、JASCC25の1週間後に東京で開催される「第7回 AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会」との合同企画である。学校でのがん教育の現状を理解し、今後を展望するとともに、AYA Week 2025実行委員会がん教育チームの取り組みを紹介し、「学校だけじゃないがん教育」のあり方についても議論する。がん患者も教師も医療者も、子どもも大人も、学校も病院も社会も、主体的に取り組み、「みんなでがん教育」の文化を醸成していきたい。

このセッションではMASCC2024Annual Meetingにて筆頭演者が日本人で採択・発表された34演題から各分野より7演題を選んで日本国内の演者の先生方に発表をお願い致しました。
MASCC Annual Meetingで採択された研究内容を拝聴するのみならず、研究策定方法、採択のコツなどと共に、さらに実際に参加したAnnual Meetingの魅力・楽しさまで教えて頂くことでもっと多くのJASCC会員がMASCCへの参加、発表を目指す足掛かりになれば幸いです。

がん患者さんへのワクチン接種による感染症予防の重要性は多くの医師が理解している。医師を対象とした2019年の日本臨床腫瘍学会でのインフルエンザワクチンに関するアンケート調査（415人、約9割が内科医）では、58%がほぼ全員にワクチンを勧めるとし、残りの医師の多く（34.5%）も患者さんが求めれば接種を支持するとしている。しかし、がん患者さんのワクチン接種率は低く、国立がん研究センター東病院での2023年のアンケート調査でも低かった（インフルエンザワクチン54%、肺炎球菌ワクチン18%、帯状疱疹ワクチン4％）。国内外の複数の研究では、患者さんのワクチン接種行動につながる要因として、「医療従事者からの推奨」が最も効果的であることが報告されており、国立がん研究センター東病院のアンケート調査でも同様の結果であり、医療従事者からワクチン接種を推奨された患者さんでの接種率は高かった（肺炎球菌ワクチン67%、帯状疱疹ワクチン46%）。
しかし、忙しい外来の中で医師からの推奨が難しいことも少なくない。接種率向上のためには患者さん自身にもワクチン接種の重要性を理解してもらい、患者さんから医師へ相談してもらうことも重要と考え、患者さんにもワクチンの重要性を理解してもらうための機会として本企画を計画した。

【目的】
どこにいても正しいがん支持医療が受けられる社会を目指す上で、行政・患者家族・JASCCの理想的かつ実現化可能な連携の仕方を双方向性のディスカッションを通して見出す。
【概要】
がん対策推進基本計画の中で、がん支持療法の推進・がんとの共生が掲げられ、JASCCは設立から十年の間に、その実現を目標に様々な活動をおこなってきた。広報・渉外委員会の任務は、正しいがんサポーティブケアを必要とする人々に格差なく届けることである。現在まで行ってきた主な活動は、各部会で作成された各種ガイドライン・ガイダンスを含む刊行物や研究の成果の社会への発信、がんサポーティブケアの普及を目的とした関連学会との連携調整などを行なっている。情報発信の方法は、X(旧Twitter)とFacebookでスタートしたが、時代に合わせて今ではInstagramも追加された。またネットワークメディアに加えてマスメディアを介した広報も行ってきた。がんサポーティブケアは社会の中で徐々に浸透しつつあるものの、未だ様々な格差のために広く普及している状況にはない。そこで同じ目標を持つ、国と地方公共団体と患者・家族とJASCCがそれぞれに活動するのではなく、うまく連携することがこの普及の推進の鍵となると考える。本企画はJASCC2024にスタートしたが、JASCC2025ではそれぞれの立場からみた問題点や解決策に関するアイデアを紹介いただき、双方向性のディスカッションを通してより具体的な連携方法が探れるシンポジウムとなることを願っている。

【目的】
本セッションでは、日本がんサポーティブケア学会Immuno-Oncologyワーキンググループ（IO-WG）が取りまとめた「IO製剤使用に関するコンセンサス・レポート」を初公開し、多職種間の協働によるirAE（免疫関連有害事象）対応の実践指針を広く共有することを目的とする。医師・看護師・薬剤師など各職種が果たすべき役割を明確にし、標準化と実装可能な体制整備を促す。

【到達目標】
参加者は、IO製剤使用に関する多職種連携の具体的目標を把握し、自施設でのirAE対応体制の標準化および質的向上に向けた行動計画を描けるようになる。

【概要】
免疫チェックポイント阻害薬をはじめとするIO製剤は、がん治療の標準的選択肢として広がりつつある一方で、irAEへの対応は施設・職種ごとにバラつきがあり、標準化が進んでいないのが実情である。こうした課題を受け、IO-WGは2023年に発足し、診療現場に即した実践的なガイドラインとして本レポートを作成した。レポートでは、患者教育、モニタリング、時間外対応、保険薬局との連携までを網羅し、初級（Benchmark）から上級（Capstone）までの三段階で多職種が取るべき行動目標を提示している。本セッションでは、作成に携わった医療職が登壇し、レポートの全体構成と活用方法を紹介するとともに、参加者とのディスカッションを通じて、現場実装の課題や工夫を共有する。evidenceの枠を超え、チーム医療による「最高のサポーティブケア」を現実のものとする一歩として、本レポートの意義と実用性を広く伝える機会としたい。
2023年に結成されたIO-WGは、irAEの適切な管理のための指針作成、チーム医療の検討、臨床試験の実施等を目的に活動しています。レポートには、IO治療開始前の準備、外来・時間外対応体制、治療前後の検査項目、患者教育とセルフモニタリング、irAE治療薬の使用、保険薬局との連携など、実臨床に役立つ内容を盛り込んでいます。

日本では年間約100万人ががんに罹患する。痛みはがん患者が経験する症状として最も頻度が高いものの１つである。痛みはがんにより発生するものの他に、治療の有害事象として発生するもの、がんや治療とは無関係に発生するものに分類される。痛みの軽減のためには臨床では鎮痛薬を用いた薬物療法が行われるが、薬物のみで解決しない難治疼痛にもしばしば遭遇する。
鍼治療は無菌鍼を体表のツボに刺す統合医療の手法である。慢性的な非がん疼痛やがん患者の痛みに対し、鍼治療が優れた効果を示すことが複数のメタ解析で報告されている。鍼灸治療は疼痛治療において非薬物療法の１つとして提案できるものであるが、鍼灸治療を提供できる医療機関は限られており、その適応や効果、メリット・デメリットについて学ぶ機会は多くない。本セッションは痛み部会と漢方部会の合同シンポジウムとして、がん患者の症状緩和のための鍼灸治療について現状のエビデンスを把握し、課題を議論する目的で企画された。本セッションを通じて鍼灸治療の実態と国際比較、がん治療やがんに伴う症状に対する鍼灸治療の有効性、症状緩和のための鍼灸治療の適応と限界、鍼灸治療を病院で提供するうえでの課題について理解を深める機会としたい。

　遺伝性腫瘍症候群と診断された後、当事者たちは二次がん予防やat risk者への対応など、治療後も様々な状況が想定されるものの、診断後に心理・社会的支援に関する長期的なフォローアップ体制は構築されていないのが現状である。本シンポジウムでは、遺伝性腫瘍症候群とゲノム情報に応じたがん予防と遺伝性腫瘍症候群の患者のLong Term Follow-Up (LTFU)の実態を踏まえて、次世代に向けたがんサポーティブケアを考える上での新たなevidenceの構築していく。
　このセッションでの到達目標は、遺伝性腫瘍症候群の現状を把握し、がん予防およびLTFU体制の整備状況や必要性を理解することを促進させる。また、遺伝性腫瘍症候群に対する関心を拡げることで、二次がん予防やサバイバーシップケアの思考を深化させ、がんサポーティブケアを深めていきたい。

近年新しい抗がん薬が次々に登場し、その画期的な治療効果により予後が改善されているが、治療効果を最大化するために最適な支持医療が必須であることは言うまでもない。新しい抗がん治療を支える支持医療の重要性は年々増しており、最適な支持医療を提供することは医療者の責務である。常に最新のエビデンスをもとに支持医療を習熟するとともに、知識をアップデートすることが必要である。しかし、最新のガイドラインや教科書を読んだからといって、十分に理解することは必ずしも容易ではない。最新からではなく、急がば回れで、古いエビデンスから時系列で治療開発の歴史を勉強すると、最新・最良の支持医療がスムースに理解しやすくなることもある。今回は、化学療法誘発性悪心・嘔吐、皮膚・粘膜障害、化学療法誘発性末梢神経障害、腫瘍循環器、発熱性好中球減少症の5領域について、治療開発の歴史から最新・最良の支持医療を学ぶシンポジウムを企画した。

　粘膜炎・皮膚障害は、がん薬物療法ではフルオロウラシルやドセタキセルなど殺細胞性抗がん薬で生じることが多い。一方、近年では免疫チェックポイント阻害薬の普及に伴い、自己免疫性水疱症や扁平苔癬を始め新たな粘膜炎・皮膚障害が生じるようになった。このため、個々の患者に対して複数の診療科が介入し、対処する場合もある。また、頭頸部癌における（同時化学）放射線治療では、粘膜炎・皮膚障害が同時あるいは逐次的に生じるため、多職種で病状を評価し、患者を支援する必要がある。
　がん治療の選択肢が増える一方、関連する有害事象も多様化しつつある。そこで今回、粘膜炎・Oncodermatology部会合同でシンポジウムを開催し、多職種で情報交換を行う。本シンポジウムの目的は、まず各職種がどのような医療を提供しているかを学び、互いの相違を知ることである。次の目標は、多職種による多角的視点に立ち、患者に対して統一されたケアを提供することである。本シンポジウムで議論することにより、粘膜炎・Oncodermatology領域のコンセンサスが生まれることを期待したい。

がん治療に支持医療が必要であることは、支持医療の学会の参加者にとっては常識になっているが、がん治療を受けたことがあるサバイバーやその家族はもとより、がん治療を行っている医療者が、どの程度その内容や必要性を理解しているのか、そして実践しているのかは疑問である。支持医療の内容と必要性を医療施設をあげて理解し、その充実に向かって努力し、そのクオリティーの向上と周知に努めていることが、がん医療を患者の満足度や納得度向上につながるはずである。国際がんサポーティブケア学会（MASCC）でも、その点に同様の課題を見出し、Center of Excellence（COE：優れたがん支持医療を展開している施設）を認定する制度を設け、毎年数施設が選ばれている。日本は、これ取り組みが無いのか、既にあるのに名乗りを上げていないのか、今後日本全国にがん支持医療の重要性の認知を進め、モデルになる施設に学び、個人個人の取り組みではなく、施設をあげての取り組みが重要であることを認識する機会を持つことは、患者にとっては言うまでもなく、世界の中で日本のがん医療の立ち位置を示す上でも、大変重要なことと考えた。今回は、MASCCのCOEに応募を考えている施設に、その準備状況を示していただき、同様にがん医療の支持医療を含めた向上を目指す多くの施設と共に、施設がどうあるべきかを考える機会としたい。聴講者の積極的な討論参加を促したい。

【目的】
がん診療におけるサポーティブケアに特化した薬事法承認・保険収載について議論する。
【概要】
本邦においては国民皆保険制度の下、地域・遍在性を問わず比較的良質な医療が提供されてきた。一方で、増え続ける社会医療費の更なる増大を抑えるために医療費の一部削減が行われており、患者にとって安価で良質な医療の提供が現実的に実施困難な状況となることが懸念される。国民の健康と福祉が良好に継続されるためには、インフラとしての医療は重要である。
日本がんサポーティブケア学会は多職種からなるがんサポーティブケアに特化した学会である。専門領域を有する他の学会とは異なり、全人的なマネージメントを行う事で医療の質及び患者の満足度を向上させることは本学会の使命とも言える。診療の一般化のゴールの一つである薬事法承認・保険収載を念頭においた議論を行う事で、がんサポーティブケアとしての課題を抽出し改善へと繋げることが重要であると考え、このシンポジウムを企画した。
はじめに令和6年度診療報酬改訂について発表を頂き、がんサポーティブケアにおける提案を3演題おこなっていただくこととする。それら具体的な内容を踏まえ、活発な議論を行いたい。

「最高のがんサポーティブケア」を実現するには、各支持療法に新たな治療選択肢を加えることが極めて重要となる。新たな支持療法の開発には、その種となる基礎研究が欠かせないが、基礎研究から臨床研究へと橋渡しする際のいわゆる「死の谷」を越えるトランスレーショナルリサーチを実現するには大きな障壁がある。この障壁を乗り越えるためのアプローチとして、トランスレーショナルリサーチにリバース・トランスレーショナルリサーチを加えた基礎−臨床双方向型研究がある。すなわち、基礎研究で得られた成果から、すぐに臨床試験に持ち込むのではなく、その成果を実臨床で検証することでその確実性を高める手法や、リバース・トランスレーショナルリサーチでは、その出発点（トリガー）は臨床現場であり、実臨床データを基にした基礎研究でその解決策を探ることにより、トランスレーショナルリサーチの実現性を飛躍的に高めることができる。本シンポジウムでは、新たながん支持療法開発のため、トランスレーショナルリサーチに挑む研究者に加え、実臨床ビッグデータから得られたデータをもとにリバース・トランスレーショナルリサーチを実践している国内の研究者から、がん支持療法の研究開発の動向や状況、研究成果についてご報告頂く。また、総合討論では、参加者と十分に意見交換し、新たな支持療法の開発に向けた方法論や問題点などについて議論する。

　「がんサバイバー」とはがんと診断されたすべての人を指すのが一般的ですが、がんサバイバーシップ研究領域では、積極的ながん治療が終了して安定した状態を維持しているがん患者を「がんサバイバー」と定義し、積極的ながん治療を受ける時期の「がん患者」と区別しています。がんサバイバーは、治療の有無によらず、様々な苦痛・困難を抱えていることが明らかになっていますので、個別の有効な支援（サバイバーシップケア）が必要です。
　昨今、がん治療が進歩し、積極的ながん薬物療法を受けながらも、安定期サバイバーのごとく長期の日常生活を送るがん患者が増加しています。このようながんサバイバーとみなせるがん患者に対しては、サバイバーシップの視点での支援が必要だと考えられます。しかしながら、研究・実践両面においてこの支援に関する具体的な取り組みは乏しい状況です。
　JASCC2024では、がん患者とがんサバイバーの両面を持ちうる治療継続中の長期生存がん患者に焦点をあて、サバイバーシップの視点での課題や支援に関する討論企画『がん患者と安定期サバイバーの境目を考える』を開催しました。２名のがんサバイバーといえる患者さんにご登壇いただき、がん患者とサバイバーの境目にいる辛さや困難をご発表頂きました。医療者・サバイバー問わず参加者全員、会場全体で総論的に課題・問題を認識し共有できたと考えています。しかし、JASCC2024では、この辛さや困難を軽減する具体的な支援について討論するには至りませんでした。
　今回のJASCC2025では、次のステップとして、がん患者とがんサバイバーの境目問題に関して、「支援の対象となる具体的問題は何か？」、「今現在がん患者に対して行われている支援でカバーできるのか？」、「支援の障害になりそうなものは何か？」「できるとしたら、その支援を誰が提供するのか？」について、４名の演者に登壇いただき、研究と実践の両面から、境目のがん患者／がんサバイバーに対する実現可能性を含めた具体的な支援について討論します。

がん臨床の現場では多くのメディカルスタッフが支持緩和領域における様々な臨床的疑問を抱いていますが、これを科学的に解決し回答する臨床試験のハードルは高いと感じます。日本がん支持療法研究グループ（J-SUPPORT）と日本がんサバイバーシップ研究グループ（SaQRA）は、支持・緩和・心のケアに関する多施設共同臨床試験・臨床研究のハブとして、患者・家族・市民参画による研究開発を行ってきました。本セッションではまず、J-SUPPORTで作成された、支持緩和領域における研究を行う上での具体的な指針を紹介し、がんの本体研究で行う場合と同じ視点と異なる視点について整理します。これらを通じて、臨床試験にはノウハウがあることを認識していただくとともに、臨床試験にもっていくためのハードルが下げられればと思います。また、がんに伴う支持緩和療法は多職種の連携が不可欠な分野であるため、多科・多職種・多施設共同臨床試験の運営について、実際の臨床試験を例に挙げながら解説します。さらに、臨床試験を行うにあたり、研究費の獲得や、支持療法に関連したシーズを持っている企業からのサポートについても議論できればと思います。日々の臨床的疑問を臨床試験という形でトスアップし、科学的な視点から臨床試験を推進することで、がんに伴う支持療法・緩和治療・心のケアの開発が促進されればと思います。日頃この分野でクリニカルクエッションを抱えているがどのように解決すべきか悩んでおられる方や、臨床研究に興味のある方は職種を問わず是非いらしてください。

【目的】
本セッションでは、がん患者が「患者力（Patient Empowerment）」を発揮できるよう、医療者が身につけるべきスキルや態度を理解し、明日からの実践に活かすための視点を共有する。

【到達目標】
1. 患者力とEmpowermentの定義を理解する。
2. 患者力の構成要素「MAC（Medical literacy／Assertiveness／Communication）」を理解する。
3. 医療者が取るべき実践的行動目標を明確にする。

【概要】
患者力とは、「自分の病気を医療者任せにせず、自らの課題として向き合い、必要な知識を身につけ、医療者と信頼関係を築きながら前向きに生きる力」と定義される（https://www.pep-med.org/）。これは単なる自己決定の強調ではなく、「自分の人生のリーダーシップを取り戻すこと」を意味しており、がん患者支援の本質に深く関わる概念である。

本セッションでは、Patient Empowerment Program（PEP）が提唱する「MAC」――医学的リテラシー（Medical literacy）、想いを伝える力（Assertiveness）、対話力（Communication）――という3つの構成要素に注目し、それぞれの観点から、患者が力を発揮するために医療者がどのように関わるべきかを具体例を交えて紹介する。たとえば、患者の治療選択における支援や、診察場面での言葉がけ、情報提供の工夫など、多職種で実践できる行動を提示することで、参加者一人ひとりが明日からの臨床に活かせるヒントを持ち帰る機会としたい。

第3期・4期がん対策推進基本計画において「アピアランスケア」は、がん患者の社会的な問題への対策（サバイバーシップ支援）として位置付けられている。社会生活を送るがん患者の治療に伴う外見変化を適切に支援するため、医療従事者への研修や各施設の相談支援窓口・情報提供体制の構築を推進することが明記されている。この対策を受けて、近年都道府県や各施設はアピアランスケアの研修や部門の立ち上げに取り組んでいる。今後ますますアピアランスケアが全国に広がっていく中で、昨今アピアランスケアへのさまざまな業界、職種からの参入があり、本来のアピアランスケアの意義である「社会の中で自分らしく生きることへの支援」から逸れてしまう事例も報告されている。また施設における部門の立ち上げについては、適切な情報を基にした内容の企画、人材の調整、技術の習得や外部との連携が重要となってくる。
我々は、アピアランス提唱元施設として、またアピアランスの立ち上げに関わった経験や、サバイバーとしての実体験を基に、①今一度アピアランスケアの原点に立ち返り、患者・医療者さまざまな立場から「アピアランスケア」についての考えや現状を共有し、アピアランスの意義について確認すること、②医療施設内で医療者が行うアピアランスケアについて、その意義・方法の見直しを行うこと、③各施設のアピアランスケアの活動や課題を共有・話し合うことで、プログラム参加者の各施設の現在のアピアランスケアの活動や今後実装していく施設への一助となることの3点を目的に本セッションを開催する。
また今回は前半は講演、後半はリアルタイムアンケートを導入した会場参加型のディスカッションを展開し、出来るだけ多くの参加者の声や意見を反映したインタラクティブな対話による会場全体での気付きに重点を置いている。

近年、がん領域においては、複数の分野にまたがるテーマに着目して新しい分野として確立する動きがみられる。Exercise Oncology（運動腫瘍学）もがん患者における身体活動・運動に注目した新しい領域であり、リハビリテーション医学、予防医学、スポーツ医科学、支持・緩和医療学、サバイバーシップ学など幅広い領域と関連している。本パネルディスカッションでは、関連領域の中でExercise Oncologyが担うべき役割とその位置づけを明らかにすることを目的とする。

【背景】超高齢社会により、高齢がん患者が増加している。高齢がん患者は加齢に伴う様々な問題を抱えており、治療方針決定には多面的な評価が必要である。診断から看取りまで、治療医、看護師、薬剤師、理学療法士・作業療法士（PT/OT）、ソーシャルワーカー（MSW）、在宅医など、多職種による継続的な支援が求められる。また、拠点病院、かかりつけ医、訪問診療医療機関、居宅介護事業所など、地域における連携も不可欠である。患者・家族の希望を尊重しながら治療を進めるには、多職種が協力し、アドバンス・ケア・プランニング（ACP）を含む協働意思決定（SDM）の実践が重要である。
【症例】83歳男性（死亡時）。骨髄腫と診断され、13年間治療を継続したが、病状の進行とともに全身状態が悪化し、最終的に在宅医療へ移行し、在宅看取りとなった。
①診断時（初回治療の選択）
高齢者機能評価（GA）ではとくに問題なく、日常生活にも支障がなかったため、標準的な治療を開始。治療の忍容性も良好で、病状の進行に応じて治療変更しながら、12年間積極的ながん治療を継続した。
②在宅医療導入時（診断から12年目）
長期治療により身体機能が低下し、GAでも予備能力の低下が認められた。歩行速度の低下や食欲不振がみられ、PS（パフォーマンスステータス）2となり、日常生活の一部に介助が必要となったため、8次治療開始時に在宅医療を導入。訪問看護を開始し、通院治療を継続したが、誤嚥性肺炎を発症し入院、リハビリテーション介入を行った。
③最終治療後の意思決定（診断から13年目）
8次治療が奏功せず、病状が進行。GAでも身体機能低下、栄養状態悪化が顕著となり、がんの進行により骨痛も増悪。主治医は緩和ケアを中心とした治療（Best Supportive Care, BSC）を提案したが、家族は治療継続を希望し、新たな治療を開始。しかし、治療の副作用による倦怠感や食事摂取量の低下が見られ、9月にはPS3-4となり、経口摂取困難・脱水により入院。患者・家族との話し合いの結果、治療継続の限界を共有し、BSCへの移行を決定。10月に自宅へ退院し、家族の支援のもと在宅療養を継続。11月に在宅で看取られた。
【ディスカッション】本症例をもとに、以下の3つの時点における多職種連携の実際と課題について議論する。
１．初回治療の選択時：高齢者の全身状態を考慮した治療選択と、がん治療の目標設定
２．在宅医療導入時：身体機能や予備能力の低下に伴う生活の変化と、多職種による支援の役割
３．最終治療後の意思決定（BSC移行）：患者・家族の希望に寄り添ったSDMと、医療の限界を伝えるプロセス
とくに、①高齢者の全身状態を考慮した治療選択と多職種によるサポート、②在宅医療への移行のタイミングと課題、③BSCへの移行における患者・家族との合意形成に焦点を当て、ACPの継続的な実施の重要性を含めた、治療選択やケアのあり方について多職種の視点から検討する。

呼吸困難は進行がん患者において頻度の高い症状であり、肺がん患者では74％の患者に認められる。患者・家族にとって苦痛となる症状であるとともに、QOLに大きな影響を及ぼす。本邦の「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン（2023年版）」や、米国臨床腫瘍学会が示す「進行がん患者における呼吸困難マネジメント」では様々な薬物療法、非薬物療法が提示されている。しかし高いエビデンスレベルをもって臨床的有用性を示した介入は乏しく、難治性であることが多い。本セッションでは現時点で考えられる標準的治療法をまとめ、現状の課題と今後の展望について検討する。臨床の場における医療チームの意思決定に活用いただき、患者のQOL向上の一助となることを切に願う。
【薬物療法で関わる呼吸器症状】
オピオイドやベンゾジアゼピン系薬、全身性ステロイドの投与が一般的である。薬物療法が有効な病態と各種薬剤の使い分けについて、「進行がん患者の呼吸困難に対する2次治療としてのミダゾラムの有効性を探索する実施可能性プラセボ対照ランダム化比較試験」を実施している森医師よりご教示いただく。
【心身医学・精神腫瘍学で関わる呼吸器症状】
呼吸困難には、不安、抑うつ、注意固着、交感神経過緊張、症状閾値低下といった因子が相互に影響し合い、悪循環を形成する病態仮説が想定される。呼吸困難を持続させる悪循環にどう対処するか、心身医学的アプローチについて松田医師よりご教示いただく。
【がん患者における呼吸管理】
通常酸素療法、非侵襲的陽圧換気療法、高流量鼻カニュラ酸素療法が挙げられる。各呼吸管理の呼吸困難緩和におけるエビデンスをまとめ、「進行癌患者に対する高流量鼻カニュラ酸素療法の呼吸困難緩和における有用性を検討する第Ⅱ相試験」の結果を報告するとともに、今後の展望について考察する。
【チームで関わる呼吸器症状】
画一的な治療・ケアでなく、患者の価値観や好みなどを含めた個別性に十分配慮し、医療チームが責任をもって介入を決定する必要がある。送風療法、呼吸リハビリテーションなど看護ケアを含め、いかに非薬物療法・薬物療法を効果的に組み合わせて患者のQOL改善につなげるか、東北大学病院での取り組みについて井上医師よりご教示いただく。

　令和5年3月に閣議決定された第4期がん対策推進基本計画では、全体目標として「誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す。」とされており、「がん医療」において医療提供体制の均てん化・集約化についてとの記載がある。しかし、実際はがん医療の均てん化は医療資源にも限りがあることから困難な状況があり、がん診療を行っている医療機関から離れて暮らすがん患者・家族にとっては、診療を受けるため時間的、費用的に大きな負荷を強いられる。
　また、がん診療は治療を受けるだけではなく、その後の支持療法や生活との両立、日々の体調変化や不安な気持ちとの対峙など多岐にわたるため、その対応やケアは遠隔地でがん治療を提供している病院だけでは限界がある。身近な地元の医療機関との連携はその解決法の一つと考えるが、一方ではがん診療はその専門性の高さから対応できる医療機関も限られているのが現状と考えられる。
　本パネルディスカッションでは、プライマリ・ケア医としてトレーニングを受けた医師との連携により、遠隔地でがん診療を受けている患者・家族が地元でも支持療法、生活におけるケアを受けられることを目標に検討を行う。
　プライマリ・ケア学会では、「がん診療に関するプライマリ・ケアワーキンググループ」が設立され、Onco-generalistの育成が始まっている。プライマリ・ケア医との協働においては、そのような地元のプライマリ・ケア医の存在を認識すること、またがん治療医もその教育、トレーニングに寄与し、診療やケアの質をともに向上させていくことが必要と考えられる。
　本パネルディスカッションの内容は、遠隔地がん診療の現状報告、がん治療医とプライマリ・ケア医の協働について、がん治療医、プライマリ・ケア医の立場から講演と、どのような協働の体制を構築していけるのか議論したい。
　本パネルディスカッションを通じて、がん治療医と各地域のプライマリ・ケア医の協働が進み、がん診療の地域差を解消することにつながればと期待する。

　COVID－19 流行を機にオンライン診療は本邦でも急速に普及した。しかしながら現時点ではオンライン診療は主にcommon disease や慢性疾患の診療で行われていることが多く、がん患者の診療に対してはあまり導入されていない。
　がん診断時からの早期緩和ケア介入や、がん薬物療法投与後の定期的な経過観察は、有害事象の早期発見や患者の不安軽減のために有効であることが報告されているが、頻回の来院は患者への肉体的、経済的な負担となる。電話による患者へのアプローチを行い、有害事象の早期拾い上げをおこなっている施設もあるが、電話では患者の表情などの重要な情報が得られず、診療報酬もつかないため人員に余裕のない施設での導入は難しい。
　ASCO2024 Plenary SessionにおいてGreerらによって行われた報告では、非小細胞肺癌患者1250名に対して、早期からの緩和的治療を対面で行う群とオンラインで行う群にランダム化して検討した結果、主要評価項目の24週時点でのQOLスコア評価は両群に差がなく、うつなどの精神症状の発生率にも差を認めなかったと報告されている。オンラインを通じた支持療法の提供は、患者負担を軽減しながらQOLを維持するために有効であると思われるが、本邦では日常診療においてほとんど普及していない。
　また日本においても緩和ケア医、腫瘍内科医は局在しており、十分な人的リソースが得られない地域は多い。オンライン診療を通じて、専門医が地域の医師と連携して、がん化学療法や支持療法を全国に提供することはこの局在を解決する一つの手段である。
　本セッションでは、がん支持療法をオンラインで普及するにあたっての、保険診療上の制度の問題点、医療提供側の問題点、患者側の問題点などを明確にして、その普及の可能性について検討する。

がん研究において患者・市民参画の動きが広がりつつある。がん支持医療領域においては、QOL指標、患者報告アウトカム、有害事象報告、ナラティブデータなど、さまざまなアウトカムが議論される。本企画においては、がん支持医療研究における患者・市民参画の必要性と現状の課題、研究のさまざまな段階（企画立案・実施・評価・発信など）における幅広い協働の可能性について、具体的な取り組みを交えながら研究者・当事者がともに議論し、支持医療がカバーする多様な領域での実践につなげたい。

日本がんサポーティブケア学会（JASCC）がん支持医療専門認定制度の概要を紹介し、制度の目的と認定に至る教育・評価（理解度確認テスト）・研修のあり方について、ワーキンググループから報告する。
JASCC認定がん支持医療者制度規則（案）より抜粋
がんに伴う症状や治療に関連して生じる有害事象、精神的および社会的な苦痛からの解放を目指して、患者が抱える多様な問題に対応するために的確ながん支持医療を提供できる医療従事者（認定がん支持医療者、以下「認定医療者」という。）の養成と認定を行い、もって国内外におけるがん診療の発展と進歩を促し、国民の福祉に貢献することを目的とする。
認定医療者は、がん診療やケアに携わる医療従事者が、患者に質の高いがん支持医療を提供するために、治療やケアの共通基盤となる知識、その実践を支える技能および態度を有するものとして、本規則に定める手続きに従い、JASCCによる認定登録を受けた医療従事者とする。
本ワークショップでは、がん支持医療専門認定制度による質の高いがん支持医療の均てん化と普及に向けて必要な取り組みと、これからのJASCCの果たすべき役割について、参加者とともに議論し、継続的な改善に向けて論点をまとめたい。

【目的】
本セッションでは、骨転移キャンサーボード（CB）の重要性を広く啓発し、参加者自身が自施設での開催に向けて最初の一歩を踏み出すきっかけを提供します。

【到達目標】

• 骨転移CBの意義と目的を理解し、開催に必要な準備や進め方を学ぶ。
• 模擬カンファレンスを通じて、CBの魅力と多職種連携の可能性を体感し、実践への意欲を高める。

【概要】
骨転移は多くのがん患者にとって避けがたい合併症であり、その対応は症状緩和から意思決定支援まで多岐にわたります。近年、治療の高度化・長期化に伴い、患者の生活や価値観に寄り添った包括的な支援体制の整備が求められています。骨転移CBはまさにその中核を担う仕組みであり、がん拠点病院の更新要件にも盛り込まれるなど、全国的な整備が進みつつあります。

しかし、「何から始めたらいいか分からない」「多職種の連携が難しい」と感じている方も少なくありません。だからこそ、このセミナーでは“実践”にこだわります。事前e-learningで基本知識を押さえたうえで、当日は実際の症例を用いた模擬CBを体験。放射線治療や手術適応の判断、リハビリテーション、ACP支援に至るまで、多職種が同じテーブルで議論を重ね、「患者にとって本当に良い選択とは何か」を多角的に考えます。

受講後には「骨転移と骨の健康部会」から修了証が発行され、自施設でのCB開催への弾みとなるはずです。昨年度参加者からは「視点が広がった」「チームでの取り組みのヒントが得られた」との声が多数寄せられ、満足度は95％を超えました。

このセッションは、ただの講義ではありません。あなた自身が、がん医療の「これから」を変える担い手となる場です。Beyond evidence――エビデンスの先にある、患者一人ひとりの価値を見つめるケアを、共に実践しませんか？

本ワークショップでは、情報通信技術（ICT）を活用した施設から在宅医療への移行支援におけるがん看護専門看護師の役割について、4名のがん看護専門看護師が異なる活動内容からそれぞれの役割を紹介する。そして、参加者との双方向のパネルディスカッション形式を取り入れ、さまざまな医療職の方々との意見交換を通じ、具体的な事例や課題など議論したいと考えている。まず、支援センターでの在宅医療への移行支援として、このセッションでは、支援センターで院内外の調整や看護実践をおこなうがん看護専門看護師が登壇する。患者がスムーズに医療や支援を受けられるようサポートし、病院と在宅医療をつなぐ役割において、ICT活用の現状と課題、今後について述べる。次に、外来・緩和ケア領域での患者在宅支援について、外来治療や緩和ケア病棟で患者を支援しているがん看護専門看護師が登壇する。病棟と在宅医療両方での治療管理や、ICTを活用した健康状態のモニタリング方法について、具体的な事例を交えて紹介する。次では、在宅で直接ケアを行うがん看護専門看護師が登壇する。具体的なケア方法やICTの活用例について紹介する。最後に、倫理的観点からのICT活用の課題や意義について考える。患者のプライバシー、データのセキュリティ、情報共有の適正化など、倫理的な観点からの課題について、専門的な視点から意見を提供する。各発表後には、フィードバックや意見を参加者から受け付け、全体で振り返りを行う。このワークショップを通じて、がん看護専門看護師が在宅医療への移行支援において果たす役割を再確認し、今後の実践に生かすための具体的なアクションプランを共有することを目指す。参加者とのインタラクションを重視し、実践的な知識を深める場として、がん看護におけるICT活用の理解を深め、今後の在宅医療支援の質向上に寄与できればと考えている。

がん治療において、栄養学の果たす役割は大きい。病期（サバイバー含む）や手術、薬物療養、放射線治療といったがん治療の内容を問わず、栄養管理は重要である。がん悪液質領域では治療薬が開発され、日常診療に浸透しているが、個別の背景に対応した栄養管理については明確な方針がない。がん薬物療法中、高齢がん、循環器疾患合併時、脳卒中後のリハビリ時など、具体的なケース別に臨床に役立つ栄養管理について演者の先生方に講演いただき、課題を整理し、今後必要な対策をフロアーの皆さま含めて多職種でディスカッションさせていただきたい。

【目的】
がん診療において日常的に直面する症候や副作用に対して、支持療法の観点からエビデンスと現場の実感（beyond evidence）の双方を整理し、多職種での対話を通じて実践知へと昇華させることを目指します。

【到達目標】

• 多職種連携の意義を再確認し、チーム医療への主体的な関わり方を学ぶ。
• 他職種・他施設の知見や経験を共有し、視野を広げる。
• 発言し合う楽しさを体験し、現場での対話と協働に生かす。

【概要】
支持療法は、抗がん治療と並ぶ「もう一つのがん治療」であり、患者のQOLと治療継続性を支える基盤です。本セッションでは、全国各地で10年以上にわたり開催されてきた「最先端がん治療セミナー」のスタイルをJASCC学術集会で再現。多職種ワークショップ形式で、制吐療法と皮膚障害という臨床現場で頻繁に遭遇するテーマを取り上げます。

これらのテーマにはガイドラインや薬剤選択といった確立されたエビデンスがある一方で、患者の背景やニーズ、施設ごとのリソースによって「一律には語れない」場面も多く存在します。そこにこそ、多職種での“Beyond evidence”な知見の共有が求められます。
セッションでは、医師・看護師・薬剤師などがそれぞれの視点から実践を持ち寄り、講義＋少人数グループディスカッションで自由に語り合います。正解のない問いに対し、他者の考えを知り、自らも発言することで得られる「気づき」が、明日からの診療やケアを確実にアップデートしてくれるでしょう。

全ての職種にとって学びがあり、すぐに現場で実践できるこのセミナー。あなたも、「発言することの楽しさ」と「Beyond evidenceの力」を体感しませんか？

【目的】
アカデミック・ディテーリングに対しデジタル技術をどのように応用すると効率よく最適な処方提案ができるかどうか検討し、チームダイナミクスを体験すること。
【概要】
アカデミック・ディテーリングとは公正中立な立場で薬剤比較を行い、最適な処方提案を行う活動であり、新規薬剤情報委員会/アカデミック・ディテーリングワーキングでは、研修会を開催することでアカデミック・ディテーリングの効果を検証してきました。前回の学術集会では、生成AIを用いたアカデミック・ディテーリングの修飾を試み、まずは生成AIがどのように臨床に応用できるか、メリットやデメリットについて参加者と討論しました。
本ワークショップでは生成AIを活用することにより、さらに効率よく情報を要約し、アカデミック・ディテーリングによる適正な処方提案ができるかを検討します。症例提示に続き、小グループに分かれてディスカッションを行い、AI x アカデミック・ディテーリングによる最適な支持療法について議論を深めたいと思います。実際に手を動かしながら、活発な議論を通じて、明日からの臨床業務に役立つ知識とスキルを得られる機会となることを期待しています。
【使用AI】
※参加者は、各AIにログインして、使用してみることをオススメします。いずれも無料です。
1. ChatGPT 3.5 https://chat.openai.com/
2. Google gemini https://gemini.google.com/app (google アカウントが必要です)
3. Microsoft copilot https://copilot.microsoft.com/ (無料でもできますが、マイクロソフトアカウントがあるとよいです)
4. Claude3 https://www.anthropic.com/claude （google アカウントでログインできます）
【その他】
当日、PC持参の方は、是非お持ちください。

　サバイバーシップ部会では、ファイザー株式会社と日本癌治療学会による「がん医療関係者の教育活動支援事業」の助成を受け、多職種医療者に向けたがんサバイバーシップ教材（e-learningと地方研修）を３年かけて開発した。本ワークショップでは、その開発プロセスを振りかえるとともに、教材の具体的内容を紹介する。
　またこれら多様なテーマの効果的かつ効率的な学習に向けて、教材の運用のあり方（ユーザー背景の設定や参加費用など）についても広く意見交換を行いたい。

（１）e-learningプログラム：部会内ディスカッションと多職種医療者調査にもとづき、既存教材が少ない以下の９テーマのモジュールを作成した。職種として、がん治療医、プライマリケア医、看護師、薬剤師（病院・保険薬局）、リハビリ専門職、医療ソーシャルワーカー、心理専門職、管理栄養士、事務職等を想定している。

• 1. サバイバーシップの概念
• 2. 治療の晩期合併症
• 3. 長期フォローアップ
• 4. がん発病後の健康行動①　身体活動
• 5. がん発病後の健康行動②　食事
• 6. 家族への影響
• 7. 遺伝性がん
• 8. 治療と仕事の両立
• 9. 経済的な問題

（２）地方研修：参加者は上記９テーマのうち３つ以上を事前視聴する。研修当日はテーマごとのグループに分かれ、勤務先で当該テーマのケアを実践する際のバリア（個人・組織）や具体的対応策を話し合う。また、地元で活用できる関連資源の情報提供も行う。2024年度に２度開催したパイロット研修の様子も報告する。

2025年度、JASCCがん支持医療専門認定制度に準拠したモデル研修会が開催され、皮膚障害をテーマにOncodermatology部会が担当する。修了者には支持医療の第一線で活躍するためのスキルが提供される。今回、皮膚障害の中で手足症候群をテーマに研修会を実施する。手足症候群は、がん薬物療法に伴う副作用の一つであり、比較的頻度が高く、殺細胞性抗がん薬や分子標的薬で生じる。患者にとって手足症候群は疼痛を伴い、日常生活や生活の質に影響を及ぼしやすい。このため、支持医療を志す医療者は、ぜひ本研修会へ参加し、手足症候群に関する評価方法や支持医療を習得してほしい。また、今回の研修会では、がんサバイバーが演者・ファシリテーターとして参加し、ケアのポイントを紹介するので、ぜひ日常の診療やケアに役立ててほしい。
一般に、手足症候群の評価は、CTCAE v 5.0に基づいて行われる（正確には「手掌・足底発赤知覚不全症候群」と称される）。しかし、CTCAE v 5.0では患者のつらさや日常生活の変化を十分知ることはできないため、Blumの分類を始めとする評価方法を参照し、活用する必要がある。また、手足症候群の重症度は経過とともに変化するため、「いつ患者がつらいか」を知り、患者の記録に基づいて評価することも重要である。
手足症候群の予防に関して、確実な方法はないものの、重症化を予防する方法を二つ挙げる。その一つは外用であり、もう一つは創傷被覆材である。外用薬の目的は亀裂を予防し、炎症を軽減することである。手足症候群は、炎症や摩擦・荷重によって表皮の肥厚および亀裂・水疱（表皮剥離）を生じ、患者は著しい疼痛に襲われる。このような皮膚の変化を保湿剤や創傷被覆材は軽減するため、手足症候群の重症化を予防する上で重要である。また、抗炎症作用を持つ外用薬も有用であることが知られ、NSAIDs外用薬や副腎皮質ステロイド外用薬を重症化の予防目的で用いることがある。
手足症候群の治療には、予防と同様に創傷被覆材および副腎皮質ステロイド外用薬を用いる。副腎皮質ステロイド外用薬のランクは、very strong以上の薬剤を選択することが多い。また、Grade 3の場合には原病に対する薬物を休薬し、一段階減量することが、次サイクル以降に手足症候群の重症度を軽減し、患者の日常生活を守る上で最も確実な方法である。手足症候群が爪囲に及ぶと肉芽を生じることがある。患者には著しい疼痛を伴うため、速やかに肉芽に対する処置を実施する。
手足症候群が重症化すると患者の日常動作は減少し、筋力の低下とともに筋量が減少しやすくなる。がん薬物療法の治療強度を保つには、栄養管理と理学療法によって患者が筋量を維持することが重要である。また、手指の機能を維持したり、回復させたりするために、患者は作業療法を受ける場合がある。手足症候群の症状を軽減することにより、患者は治療意欲を回復することがあるので、手足症候群を適切に対処することが医療者に求められる。

がん治療に伴う皮膚トラブルは多岐にわたり、患者さんのQOL（生活の質）に大きな影響を及ぼし、治療へのアドヒアランス向上を妨げる。特に、EGFR阻害剤は皮膚障害が頻発し、皮膚障害の悪化は治療の継続を困難にし、最終的には治療効果の低下につながる可能性がある。本セミナーでは、早期介入や適切なケアを行うことで皮膚障害の重症化を防ぎ、患者さんが安全かつ快適に治療を続けられるようにすることを目的とする。なお、本セミナーはハンズオンの形式をとり、具体的なケア方法を実技するとともにみなさまにも参加していただくことにより下記が期待され、明日からの臨床の現場で役立てていただきたいと考えている。

• がん治療に随伴する皮膚障害を早期に発見し、重症化を防ぐ具体的な手技を習得できる。
• 患者指導や日常ケアの質向上により、治療継続率および患者満足度の向上が期待される。
• 多職種連携（看護師、薬剤師、皮膚科医など）の実践的な手法を学ぶことで包括的ケアの実現を促進する。

【目的】
漢方薬による口腔粘膜炎マネジメントの可能性を探る。

【到達目標】

• 古来より口腔粘膜炎の治療に使われてきた漢方薬の歴史を知る。
• 医療用漢方エキス剤の利点と飲み方の工夫について学ぶ～水オブラート法～
• 標準的な口腔粘膜炎マネジメントについて学ぶ～歯科支援の有効性～
• 口腔粘膜炎に使える漢方薬について作用機序・エビデンスとともに学ぶ。
• 半夏瀉心湯うがい液の作り方について実技で学ぶ。

【概要】
口腔粘膜炎は、がん治療において高頻度に発現する有害事象の一つです。食事や会話を障害して患者さんのQOL悪化に直結するだけでなく、重症化すると全身感染症へと波及し、円滑ながん治療の妨げともなりうる有害事象です。
JASCC粘膜炎部会と漢方部会では、共同でこの課題に取り組み、昨年度は「口腔粘膜炎に対する漢方（半夏瀉心湯）のうがいの方法」の動画を作成し、学会HPに公開しました。
本学術集会ではこれを周知すべく、ハンズオンセッションを企画しました。まず標準治療のおさらいをし、漢方薬の作用機序・エビデンスを知って、明日から堂々と患者さんに説明できるネタを仕入れましょう！そして実際に「水オブラート法」を体験したり、漢方薬のうがい液を作ってみましょう！その場で専門家に質問することも可能です！
本ハンズオンを通じて、口腔粘膜炎や漢方薬に興味を持つ医療者と仲間になることを期待しています。
事前参加登録制ですが、当日参加もお待ちしていますので、皆さま奮ってご参加ください！